1.事業の再生手法とは

事業の再生手法とは

 事業再生において選択される再生手法、すなわち金融機関による支援の内容は、対象企業の窮境要因、財務状況、今後の経営改善計画に基づく収益計画の内容を踏まえて選択されるものであります。

 企業の再生局面における「経営改善計画」は、大きく分けると以下のとおり三つの段階によって策定されますが、金融支援の内容は第3段階において対象債権者も含めた関係者で協議され選択されることになります。

 第1段階:デューデリジェンスによる実態把握
 第2段階:「裸の経営改善計画」の策定
 第3段階:「経営改善計画」の策定

 つまり、第1段階のデューデリジェンスによる実態把握によって十分に窮境要因を見極めた上で、第2段階の自助努力による「裸の経営改善計画」を適切に策定することで、第3段階において財務改善の指標である「実質債務超過解消年数」、「債務償還年数」を踏まえた再生手法を選択することになります。

再生計画の目線(数値基準)

  • 実質債務超過が5年以内に解消すること
  • 経常利益が3年以内に黒字化すること
  • 再生計画の終了年度において、有利子負債がキャッシュフローの10倍以下に収まること

2.事業の再生手法の内容

 主なものとして、①リスケジュール、②DDS(資本性借入金)、③DES(債務の株式化)、④債権放棄、⑤第二会社方式による実質的債権放棄があります。

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種類 特徴
①リスケジュール
  1. 返済期限を延長するなど返済条件を変更すること。
  2. 債務免除を伴わないため、基本的には資金繰りの支援であり、財務面の大幅な改善効果は期待できません。
  3. 一時的な事業の下振れが生じた場合など、早期改善の場面で行われる金融支援
②DDS(資本性借入金)
  1. 債権者が債務者に対して有する既存の貸付債権の全部又は一部を劣後する内容に変更すること。
  2. 一定期間、返済の猶予を受けることができ資金繰りが安定する効果があります。
③DES(債務の株式化)
  1. 既存債務を株式に転換すること。
  2. DDSと異なり、決算書上も負債が資本に振り替わるため、債権放棄にきわめて近い効果が得られる抜本的な再生手法であります。
④債権放棄
  1. 金融機関が、貸付金の一部もしくは全部の返済を免除すること。
  2. 債務者側から見る場合は債務免除とよばれます。
⑤第二会社方式による
実質的債権放棄
債務者の事業の全部または一部を会社分割又は事業譲渡により別会社に承継した後、当該債務者企業を特別清算手続又は破産手続により清算する再生手法であります。

3.再生手法の選択イメージ

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改善前 金融支援後 改善後
①リスケジュール リスケジュール 改善前 資産 営業負債 債務超過 借入金 リスケジュール 金融支援後 資産 営業負債 債務超過 借入金 運転資金の資金繰り改善 リスケジュール 改善後 資産 営業負債 借入金 利益による債務超過解消 CF獲得による有利子負債圧縮
②DDS DDS(資本性借入金) 改善前 資産 営業負債 債務超過 借入金 DDS(資本性借入金) 金融支援後 資産 営業負債 債務超過 借入金 返済期限までの大幅な資金繰り改善 DDS DDS(資本性借入金) 改善後 資産 営業負債 借入金 DDS 利益による債務超過解消 CF獲得による有利子負債圧縮
③DES DES(債務の株式化) 改善前 資産 営業負債 債務超過 借入金 DES(債務の株式化) 金融支援後 資産 営業負債 債務超過 借入金 DES 借入金の資本への転換による 大幅な財務改善 DES(債務の株式化) 改善後 資産 営業負債 借入金 DES 利益による債務超過解消 CF獲得による有利子負債圧縮
④債権放棄 債権放棄 改善前 資産 営業負債 債務超過 借入金 債権放棄 金融支援後 資産 営業負債 債務超過 借入金 債権放棄 借入金の消滅による 大幅な財務改善 債権放棄 改善後 資産 営業負債 借入金 利益による債務超過解消 CF獲得による有利子負債圧縮
⑤第二会社方式 第二会社方式 改善前 資産 営業負債 債務超過 借入金 第二会社方式 金融支援後 資産 営業負債 のれん 借入金 借入金 借入金の実質的な消滅による 大幅な財務改善 第二会社方式 改善後 資産 営業負債 借入金 利益による債務超過解消 CF獲得による有利子負債圧縮